『「生き抜く力」の育て方』(蝦名玲子)どんな子が苦境を乗り越えられるのか?乗り越える力の育て方とは?自己肯定感の高め方

2.5
「生き抜く力」の育て方 育児

こんにちは!

ヒナにどんな時代も力強く生き抜ける子になってほしいなぁと思っているので、

蝦名玲子さんの『「生き抜く力」の育て方』を読みました。

筆者の蝦名さんはクロアチアでは旧ユーゴ紛争生存者や、日本では小児がん患者などつらい環境にいたけれど希望を持ち続けた人々を研究した方で、保健学の博士で健康社会学者。

本は、とても専門的で参考文献も多いのだけど、産後のポンコツ頭の私は読むのに苦労しました。

文字が多い!専門用語が多い!

読むのに時間かかりました。

(そして最後まで読めなかった…)

でも、生き抜く力をつけるにはどうしたらいいか、というエッセンスは学べました。

彼女によると、生き抜く力の定義は3つあると。

①レジリエンス

②健康生成論(Sense of Coherence)

③心的外傷後成長

それぞれ微妙に違うので、その簡単な説明と、どうしたらその3つの生き抜く力がつくようになるのか、というのをまとめておこうと思います。

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生き抜く力その1:レジリエンス

「挑戦的あるいは驚異的な状況にもかかわらず、うまく適応するプロセスや能力、結果のこと」

「重大な逆境という文脈のなかで、良好な適応をもたらすダイナミックなプロセス」

(P3)

逆境を乗り越え、レジリエントな大人になれた人の共通点

①個人的な要因

1歳だった時、母親

・積極的

・優しい

・抱きしめたくなるくらいかわいい

・扱いやすい

と言っていたことが多い。

2歳の時、他人からも

・感じが良い

・明るい

・フレンドリー

・ちゃんと応える

・社会的

と言われる傾向にある。

▶10歳

・実用的な問題解決力と読解力が高い

・自尊感情(自己肯定感)をもつ

・助けを必要としている人に喜んで手を貸す

思春期が終わる頃

・自分の能力への信頼がある

・「目の前の問題は、自分の行動によって乗り越えられる」という確信を抱く

・教育や職業における現実的な計画を立て、将来に向けての高い期待を抱く

②家族内の要因

実の親をあてにできない、という人も、人生の早い時期に祖父母や年上のきょうだい、おじやおばなど、親の代わりとなり得る、感情的に安定した人と強い絆を築いていた。

男性は家庭のおルールや「男はこうあるべき」といった役割がしっかりとしていながらも、感情の表出が促され、受け入れられる家庭に育っていた。

女性は、同性の養育者からサポートを受けながらも、自立の大切さを強調される家庭で育っていた。

③コミュニティ内の要因

コミュニティ内の年長者や友達を頼る傾向にあった。

大変な時には一人で悩みを抱えずに、信頼できる先生、近所の優しい人、年上のメンター、恋人の親、リーダー的存在の人、牧師さんや教会のメンバーなどに相談していた。

レジリエントな大人になるために必要な4つの能力と資源

・高い計画性や将来へのモチベーション
・自律性
・対処スキル
・大人からのサポート
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生き抜く力その2:健康生成論(Sense of Coherence=SOC)

人は「健康と健康破綻状態との間を常に行き来している」が、「健康を破綻させる力」よりも「元気になる力」が大きければ、人は健康状態を維持することができる、という考え方。

健康生成論(SOC)を構成する3つの感覚
①わかる感(把握可能感)
②できる感(処理可能感)
③やるぞ感(有意味感)

この3つの感覚が高いと、困難な状況にさらされても乗り越えていける。

健康生成論(SOC)を構成する3つの感覚

①わかる感(把握可能感)

「自分の置かれている状況を理解できている、または今後の状況がある程度予測できる」

わかる感が高いと、自分にストレスを与える原因を把握したり、予測したりできると思えるため、動揺しにくくなる。

②できる感(処理可能感)

ストレスをもたらす出来事に対して、自分にはそれを処理するために必要な人やモノなどの「困難を乗り越えるときに使える資源」があるから、「なんとかなる」「なんとかやっていける」という感覚のこと

専門家の情報的サポート、パートナーの情緒面サポート、丈夫な体、「自分を信じることができる」「前向きである」という価値観や態度など。

ストレスをもたらす出来事を処理するために必要な資源があるということに気づくと、追いつめられにくくなる。

③やるぞ感

ストレスをもたらす出来事を「これは自分にとっての挑戦だ」「これを乗り越えることは人生に必要なことだ」と信じ、日々の営みへのやりがいや生きる意味を見出せる感覚のこと。

「これを乗り越えることには意味がある」「神様は乗り越えられない試練は与えない」と、困難を乗り越える意味を見いだせると諦めにくくなる。

SOCが高い人の共通点

幼少期

・親など、自分を育ててくれている人が常にそばにいて、安心してあてにできるという経験ができていること。

・行き詰まった時にはうまくいかせるための方向性を示してくれて、「自分が決めたことは認められている」と感じられること。

思春期

高校生活一年間弱でSOCがどう変化したか、という実験で、高いSOCを維持した生徒の共通点

・小学生のときに部活動を積極的にしていたこと

・いじめられた経験がないこと

・高校生のときに成績がよいこと

・スポーツや芸術面が得意なこと

・友達関係をうまくやれ、わかり合える友人の数が多いこと

※学年が上がるにつれてSOCは高まる傾向にある。

SOCを育むために

①一貫性のある経験→わかる感を高める

「規律やルール、そのルールについての責任の所在、価値観などが明確な環境の中で生きる経験をすること」

②適度なストレス→できる感を高める

「バランスのとれた適度なストレスにさらされながら生活すること」

③結果形成に参加する経験→やるぞ感を高める

「社会的に価値のある意思決定に参加し、認められる経験をすること」

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生き抜く力その3:心的外傷後成長

「危険な出来事や困難な経験における精神的なもがき・闘いの結果生ずる、ポジティブな心理的変容の体験」

精神的にもがき、葛藤していくなかで、トラウマとなるほどの出来事が起こる前の状態に回復するだけでなく、それ以上の人としての成長が見られるという意味

5つの成長領域

①人間としての強さ

「私は傷つきやすいけれど、思っていたよりもずっと強いのかもしれない」と気づき、自分に対する信頼や自尊感情(自己肯定感)が育まれていく

②新たな可能性

試練や苦しみと向き合うなかで、新たな可能性や進むべき道に気づいたからこそ起きる変化

③他者との関係

過酷なトラウマ経験をし、身も心もズタズタになり、その後もがき苦しみ続けたとしても、そんな弱りきった自分を見捨てずにいてくれる家族や友人がいたことで、「自分にとって本当に大切な人は誰か」に気づけること

同じような苦悩を経験している人に対して、仲間意識を感じやすくなること

同じ境遇にある人への慈愛の念や思いやりの気持ちが増すという変化

④人生に対する感謝

人生の優先順位が変わり、それまで当たり前と思ってきた命や日常に感謝するようになる

⑤スピリチュアルな変容

人生の目的や意味、根源的で実存的な問いに対する答えが明確になり、魂や神秘的な事柄を理解するようになる

心的外傷後成長につながりやすい人の特徴

・ある程度認知力が成熟した年齢の人

トラウマとなる出来事により失ったものと得たものの両方を、同時に認識できるレベルの認知力がなければ、建設的な反芻作業ができない。

同じ思春期でも年齢が高いほど成長が見られる。

・楽観的性格や外向性、素直さ、人当たりの良さなどの気質

・自分の価値を信じられるという自尊感情(自己肯定感)

・「ストレスフルな状況をうまく切り抜けられる」と全般的に思える自己肯定感

・「私には必要な知識やスキルなどがあるから、うまく遂行できる」と思える自己効力感

・将来への期待や希望

・「何がコントロールできて、何ができないかを性格に予測する力」

・経験を活かす態度や忍耐強さ

・理解があり、温かく様子の変化にすぐ気づいてくれるような他者からのサポート

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生き抜く力を育むコミュニケーションと環境づくり

どうしたらこの3つの生き抜く力(レジリエンス、健康性正論、心的外傷後成長)を育てられるのか?

3つの生き抜く力が伸びる共通点のポイントは3つ。

・自尊感情(自己肯定感)

・自己効力感

・アサーション

自尊感情

=自分の絶対的価値を信じられるようになる

「自分は長所も短所もあるこの自分だからよい」

【自尊感情を高めるには?】

「現在の能力」を褒めるのではなく、「将来さらなる努力が得られる確信」をもたせる。

集中力や忍耐力を認める。

※褒めるという行為は子どもを支配下に置く行為。

褒められて人がその行動をとるのは、「褒められたいから」が理由であり、「もっと学びたい」という内発的動機のため。

褒めて言うことを聞かせる縦の関係性は子供の好奇心や自発性を妨げる。

自己効力感

=自分の能力を信じられるようになる

「私には必要な知識やスキルなどがあるから、うまく遂行できる」

≒自信

【自己効力感を高めるには?】

一度でもいいから「うまくいった」という成功体験を積ませる

観察学習できる環境をつくり関心を高める

身近だけど自分よりちょっとすごい人の行動を見せる。

アサーション

=よい関係を築けるようになる

=うまく主張できる

「困ったときには人に助けを求めたらいい」

思春期以降の人にとって、家族以外の他人から承認され、受け入れられることは自信をつけるのに不可欠

【アサーションを高めるには?】

自分の気持ちや考えを相手に正直に伝えるが、相手のことも配慮する、自分も相手も尊重した表現方法を教える。

DESC

Describe:相手の気持ちや行動を客観的に述べる

「ずっとスマホを見ていて友達からの連絡が気になるみたいだね」

Express:自分の感情や意見を表現する

「私は食事しながら今日あったことを話したいんだけど」

Specify:相手にとってもらいたい行動を明確に述べる

「スマホを脇に置いてもらえたら」

Consequences:結果を明確にする

「嬉しいなぁ。」

 

 

なかなか難しい本だったけれど、言っていることは今まで読んできた本と言っていることは大きくは違わないなぁと思いました!

ヒナが思春期になる前くらいにもう一回読んでみようかな。

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