こんにちは!
ポール・タフの、『成功する子 失敗する子 何が「その後の人生」を決めるのか』を読みました。
アメリカで親から経済的、精神的、物理的に十分なサポートを得られない子どもたちをよく観察して結論を導き出しています。
科学的に証明された有名な論文を多用しているので説得力があります。
ただ、日本語翻訳版を読んだので、ちょっと読みにくかったのと、出てくる組織や名前が(あたりまえだけど)アメリカのものなのでカタカナ多すぎて頭痛くなりました…(笑)
知らない組織名がたくさん出てきたので親近感はもてなかったです。
(特に第三章のチェスの学校のくだりは描写が細かすぎて、その割にはポーンと自分の中で一般化できるような重要な結論には至らなくて読んでいてつらかった…)
とはいえ、読んでいておおこれはなかなかよい実験だ!とか、よい結論だ!というものがあったので、記録しておこうと思います。
『成功する子 失敗する子 何が「その後の人生」を決めるのか』で学んだこと
問題行動を起こすのは貧困ではなくストレスが原因
・幼少期にストレスにさらされると、自己調整機能がうまく働かなくなる。
脳のなかで幼少期のストレスから最も強く影響を受けるのが前頭前皮質、つまり自分をコントロールする活動―感情面や認知面におけるあらゆる自己調節機能―において重大な役割を果たす部位である。
ストレスに満ちた環境で育った子供の多くが、集中することやじっと座っていること、失望から立ち直ること、指示に従うことなどに困難を覚える。そしてそれが学校の成績に直接影響する。
(P50)
・貧困層の子たちに問題児が多いのではなく、貧困によるストレスを抱えた子たちに問題行動を起こす子が多い。
実行機能の能力を阻害しているのは貧困そのものではなく、貧困にともなうストレスだったのである。
(P54)
思春期を過ぎても手遅れではない。まだ間に合う!
幼少期が大事なのは明らかだが、思春期を過ぎてしまったらもう手遅れなのか、という問いに対しては、まだ間に合うという結論に。
実行機能の高低が将来を見通すのに非常に役立つ
実行機能がほかの認知的スキルよりもはるかに柔軟
前頭前皮質は脳のほかの部位よりも外からの刺激に敏感で、思春期や成人早期になっても柔軟性を保っている。だからもし環境を改善して実行機能を高めることができれば、その子供の将来は劇的に改善される可能性がある。
(P55)
思春期の難しさの原因
ちょっと余談だけれど、思春期の難しさの原因は▼
思春期のころの生活に強い影響を与える神経系はふたつあるのだが、このふたつの発達がきちんと連動していないところに問題がある。
一方は刺激処理システムと呼ばれるもので、これによって人はより興奮を求め、感情的に反応し、周囲の情報に敏感になる。もう一方は認知制御システムと呼ばれるもので、あらゆる衝動を規制する。十代が危険な時期であるといわれてきたのは、刺激処理システムが思春期の早い段階で最大まで発達するのに対し、認知制御システムのほうは二十代になるまで成熟しきらないため。(中略)このため数年のあいだは行動を抑えてくれる制御システムが不備なままで狂ったように刺激を処理していくしかない。
(P56)
親からの温かい敏感なケアが大事
母ラットの実験(P64〜)がこの本の中で私が一番印象を受けた箇所。
ラットを扱う研究者たちはたびたび子ラットを取り出して検査をしたり体重を計ったりするが、ある日処置のあとに子ラットをケージに戻すと、一部の母ラットは子ラットに駆け寄り、数分なめたり毛づくろいをする。
一方無視してやりすごす母ラットもいる。
子ラットになんらかの処置をすると、子ラットは不安を示すストレスホルモンを大量に分泌したが、母ラットがなめたり毛づくろいをするとその不安が解消され、ストレスホルモンの波が引いた。
子ラットが大人になって母ラットから引き離して実験しても、なめたり毛づくろいをたくさんされたラットは迷路を抜けるのもうまく、より社会性があり、好奇心が強く、攻撃性が低く、環境にうまく適応した。
これは別に生物学上実の母ラットだけでなく、育ての親である母ラットになめられたり毛づくろいされても同じ結果になった。
一部の心理学者たちは、ラットの毛づくろいにいちばん近いものは人間でいうと「愛着(アタッチメント)と呼ばれる事象のなかに見つかると考えている」
(P71)
生後一ヶ月ほどのあいだ、泣いたときに親からすぐにしっかりとした反応を受けた乳児は、一歳になるころには、泣いても無視された子供よりも自立心が強く積極的になった。就学前の時期には同様の傾向が続いた。つまり、幼児期に感情面での要求に対して親が敏感に応えた子供は自立心旺盛に育った。(中略)親からの温かく敏感なケアは子供が外の世界に出てゆけるための「安全基地」となるのである。
「慣れない状況」における子供の行動は生後一年間の親の反応と感度と直結していた。子供の気持ちに敏感に反応した親の場合には「安定群」の子供になった。突き放した態度だったり葛藤や敵意を抱えていたりする親の場合には「不安定群」の子供になった。そして幼少期の愛着関係が与える精神的な効果は一生つづく。
※アタッチメントについては『頭のいい子にする最高の育て方』で詳しく書かれていました。
成功する人の特徴のひとつは見返りなく頑張れる勤勉性
大学入学が難しく卒業が比較的簡単な日本と違って、アメリカでは大学を卒業することがとても難しい。高校卒業者と同等の能力を持つ大検をとった高校中退者の中で、大学卒業できない人の割合は高い。
大学卒業者に共通する気質は、ジェームズ・ヘックマンなどの経済学者たちが非認知スキルと呼ぶものと重なる部分が大きい。
IQは低くなくても、目に見えるインセンティブがなくとも真剣に取り組めるという資質に欠けていることがある。
見返りの有無に関わらず努力できる資質はパーソナリティ心理学の専門語では「勤勉性」と呼ぶ。
(気質の分析に最も有効な方法は、気質を5つの要素―協調性、外向性、情緒不安定製、未知のものごとに対する開放性、勤勉性―に沿って考えること)
若者を育てるには失敗を経験させること
若者の気質を育てる最良の方法は、深刻に、ほんとうに失敗する可能性のある物事をやらせてみること
(P140)
性格=習慣。性格は決まっているものではない。直せる!
我々が美徳と呼ぶ特質は単なる習慣で、それ以上でもそれ以下でもない
習慣と性格とは本質的にはおなじものです
よい子供と悪い子供がいるわけではなく、よい習慣を持った子供と悪い習慣を持った子供がいるのです。(中略)わたしたちの神経系は一枚の紙のようである。(中略)くり返し折れば、折り目がつく。
(P152)
親は心配だからといって常にそばにいて守る必要はない。子どもがつらい時に気づいて声をかけてあげること。
勇敢で好奇心が強く親切で賢明な成人を生みだすいちばん確かな方法は、(中略)まず、深刻な心的外傷と慢性的なストレスから可能なかぎり子供を守ること。次に、これがさらに重要だが、少なくともひとりの親と―理想的にはふたりの親と―安定した、愛情深い関係を築くこと。これが成功の秘訣のすべてではないが、大きな、とても大きな一部である。
(P269)
我がラットは絶えずなめたり毛づくろいをするわけではない。心配そうにそばをうろうろしたりはしない。
母ラットがそうするのは、子ラットがストレスを受けた時。
刺激を受けたストレス対応システムをうまく管理して休止状態に戻す方法を教えているよう。
人間でいうと、癇癪をおこしてひどく怯えた後に落ち着きを取り戻すことでは?
だから、慰めたり、ハグしたり、話しかけて安心させた。
(P269)
もう少し大きくなると、子供をすべての害悪から守りたいという衝動と、ほんとうに成功者になってほしいならまずは失敗させる必要があるという知識との葛藤がある。
それぞれの失敗から学ぶ方法、自分の失敗をまっすぐに見つめる方法、自分がしくじった理由と真正面から向き合う方法を教えることが大事。
(P270)
以上が、『成功する子 失敗する子 何が「その後の人生」を決めるのか』を読んで私が学んだことです!
ちょっと難しかったけど、ヒナを育てていく上で参考になる考え方がたくさんありました!
Comments