中室牧子さんの、『「学力」の経済学』を読みました。
一般的にこう言われてるけど、本当?と、科学的根拠、エビデンスがない状態で形成された日本の教育に疑問符を投げかけています。
これわかるー!と思ったのは、教育に関しては、子育てを経験した人は根拠がなくても、自分の経験をもとに、偉そうにアドバイスしがちだということ。
私の母世代に特に多いのだけど、自分が子育てを経験しているからか、まるで子育てのプロ、のようなスタンスでアドバイスしてくるのです。
もちろん私やヒナのためを思って言ってくれているのだろうけれど、調べてみたらそんな科学的根拠まったくなかった…みたいなこと多数。
それが原因でイライラしたり、ちょっと距離をおこうと思ってしまったり、ということがヒナを産んでからよくあります。
気にしなければいいのだけど、私、親の言うことをよく聞くようにしつけられた、ザ・長女気質なので、頭のどこかにひっかかってモヤモヤしてしまうのです。
そういえば親からの言葉は呪いにもなるよ、ということ、この本にも書いてありました。
『「学力」の経済学』では、科学的根拠に基づいた説がたくさんとりあげられています。
前置きは長くなりましたが、この本を読んでこれは覚えておきたい!と思ったことをメモしておこうと思います。
『「学力」の経済学』
ご褒美で釣るのは良くないのか?
人は目先の利益や満足をついつい優先してしまう。
目の前にご褒美をぶら下げられると、今勉強することの利益や満足が高まり、それを優先する。
「今ちゃんと勉強しておくと将来のためになるのよ」は効かない。
ご褒美作戦は子どもが今勉強することを先送りにさせない戦略。
では、ご褒美は子どものやる気を失わせてしまうのか?
ご褒美のことを「外的インセンティブ」といい、好奇心や関心によってもたらされるのを「内的インセンティブ」と呼ぶ。
外的インセンティブが内的インセンティブを締め出してしまった例はある。
たとえば献血する人に対してお金を払うようにした途端献血をする人が減ってしまったり、高校生が募金を行う際に集めた額に応じて謝金がもらえるという仕組みにしたら募金額が減ってしまった、など。
が、フライヤー教授の実験によると、内的インセンティブを計測したところ、ご褒美の対象になった子どもたちと、対象にならなかった子どもたちでは、統計的に有意な差が観察されなかった。
つまり、ご褒美が子どもの「一生懸命勉強するのが楽しい」という気持ちを失わせてはいなかった。
※これは、▼この本に書かれていた内容と異なる。
学力アップに効果のあるご褒美のあげ方は?
実験の結果、学力テストの点数がよくなったのは、アウトプットではなくインプットにご褒美を与えられた子供たち。
☓「テストで良い点を取ればご褒美をあげます」
○「本を一冊読んだらご褒美をあげます」
☓「テストで良い点をとったらお小遣いをあげるよ」
○「1時間勉強したら終わった後にお小遣いをあげるよ」
なぜなら、インプットにご褒美があげられると、子どもにとってどう行動すべきか、何をすべきかが明確だから。
※ただし、どうすれば成績をあげられるのかという勉強方法を教えてあげられる人がそばにいる場合は、アウトプットにご褒美を与えても学力が改善する。
お金はよいご褒美なのか?
子どもが小さいうちは、トロフィーのように子どものやる気を刺激するようなお金以外のご褒美を与えるのがよい。
※実験で使われたトロフィーは400円ほどのもの。
中高生以上にはトロフィーよりもお金が効果的だった。
金額や与え方を間違わなければ、お金は悪いご褒美ではない。
というのも、ご褒美にお金を得た子どもたちは、お金を無駄遣いするどころか、きちんと貯蓄をし、娯楽や衣服、食べ物に対して使うお金を減らすなど、より堅実なお金の使い方をしていたことが明らかになったから。
お金のご褒美は悪くないが、金融教育が同時に行われるべき。
子どもは褒めて育てるべきか?
よく、「子どもをほめて育てると、自分に自信を持ち、さまざまなことにチャレンジできる子どもに育つ」という論調があるが、大規模な研究結果によると、自尊心が高まれば、子どもたちを社会的なリスクから遠ざけることができるという有力な科学的根拠はほとんど示されなかった。
【実験内容】
・高1の時に成績がよかった子が高3担った時に自尊心が高かったことは示されたが、高1の時に自尊心が高かった子が高3の時に成績が良かったという結果は示されなかった。
・宿題とともに「あなたはやればできる」というメッセージを送ったグループと送らなかったグループでは、送ったグループは送らなかったグループよりも試験の成績が悪かった。
自尊心と学力の関係はあくまで相関関係であって、因果関係は逆である。
つまり、
学力が高いという「原因」が、自尊心が高いという「結果」をもたらしている。
学生の自尊心を高めるような介入は、学生たちの成績をよくすることはない。
褒め方が大事!「頭がいいのね」ではなく「頑張ったね」
これは他の本でも読んでるので既出だけれどざっとまとめると、
子どものもともとの能力(頭の良さ)をほめると、子どもたちは意欲を失い、成績が低下する。
悪い成績をとった時も「自分は才能がないからだ」と考える傾向があった。
それよりも「よく頑張ったね」と努力した内容を褒められた子どもは2回目、3回目も粘り強く挑戦し続ける。
悪い成績をとっても、「能力の問題ではなく、努力が足りないせいだ」と考える。
テレビやゲームは子どもに悪影響なのか?
研究の多くは、テレビやゲームそのものが子どもにもたらす負の因果関係は私たちが考えているほどには大きくない、と結論づけている。
逆に、米国で行われた別の研究では、幼少期にセサミストリートなどの教育番組を見て育った子どもたちは、就学後の学力が高かったことを示すものもある。
ではどれくらいの時間がいいのか?
無制限に見せた場合はさすがに問題がある。
テレビやゲームの時間が長くなりすぎると、子どもの発達に悪影響が飛躍的に大きくなる。
1日に1時間程度のテレビ視聴やゲーム使用が子どもの発達に与える影響はまったくテレビを見ない、ゲームをしないのと変わらないということが示された。
ただし1日に2時間を超えると、明らかに負の影響がある。
「勉強しなさい」は意味がない
小学校低学年の子の勉強における親の関わり方。
父母それぞれの関わり方がどの程度子どもの学習時間の増加に貢献しているか、という実験▼
・勉強をしたか確認している
・勉強を横について見ている
・勉強する時間を決めて守らせている
・勉強するように言っている
↓
・お手頃なものに効果はない。
「勉強するように言う」のは逆効果!
・男の子なら父親が、女の子なら母親が関わると良い。
(ヒナは女の子なので、私の責任重大…!!!)
友だちが与える影響は大きい!
学力の高い友だちの中にいると、自分の学力にもプラスの影響がある。
ただし、学力の高い優秀な友人から影響を受けるのは、もともと学力の高かった子どものみ。
レベルの高すぎるグループに子どもを無理に入れることは逆効果になる可能性すらある。
問題児の存在は、学級全体の学力に負の因果関係を与える。
ピアエフェクトがプラスに働くのは、同じ程度の学力の子どもたちが互いに影響を受ける時。
「同じような学力の子どもたち」を同じ学級に編成する習熟度別学級はこの効果を強めるためのもの。
自分と同程度の学力の子どもたちと一緒になることで、他者と比較して意欲を失うことなく、互いに助け合うことができるため。
教員も、子どもたちの理解度やペースに合わせた指導が可能になる。
特に大きな学力上昇が見られたのは、もともとの学力が低い子どもたち。
習熟度別学級は持続力もあった。
ただし、子どもの学齢が低い時に習熟度別学級を実施すると、格差が拡大し、平均的な学力も下がってしまう。
教育にはいつ投資すべきか
もっとも収益率が高いのは、子どもが小学校に入学する前の就学前教育(幼児教育)。
子供の年齢が小さいうちほど高く、就学前がもっとも高い。
その後は低下の一途をたどる。
投資というのは勉強!学習塾!ということではなく、人的資本への投資。
しつけなどの人格形成や体力や健康などの支出も含む。
就学前教育への支出は、雇用や生活保護の受給、逮捕率などにも影響を及ぼす。
社会全体への好影響を「社会収益率」として推計した場合、年率7〜10%。
大事なのは非認知能力!
非認知能力とは
・自己認識(自分に対する自信がある、やり抜く力がある)
・意欲(やる気がある、意欲的である)
・忍耐力(忍耐強い、粘り強い、根気がある、気概がある)
・自制心(意志力が強い、精神力が強い、自制心がある)
・メタ認知ストラテジー(理解度を把握する、自分の状況を把握する)
・社会的適正(リーダーシップがある、社会性がある)
・回復力と対処能力(すぐに立ち直る、うまく対応する)
・創造性(創造性に富む、工夫する)
・性格的な特性(神経質、外交的、好奇心が強い、協調性がある、誠実)
非認知能力の鍛え方
これら非認知能力は
①学歴・年収・雇用などの麺で、子どもの人生の成功に長期にわたる因果効果を持つ
②教育やトレーニングによって鍛えて伸ばせる
・自制心
自制心は筋肉のように継続と反復で鍛えられる。
「背筋を伸ばせ」と言われ続けて、それを忠実に実行した学生は成績の向上が見られたという研究がある。
心理学の分野でも、細かく計画を立てて記録し達成度を自分で管理することが自制心を鍛えるのに有効であるという研究がある。
・やり抜く力
心の持ちようが大事。
「自分のもともとの能力は生まれつきのものではなくて、努力によって後天的に伸ばすことができる」と信じられる子はやり抜く力が強い。
※ステレオタイプを植え付けられると自分もそれを踏襲してしまうので注意が必要。
(「年齢とともに記憶力は低下する」という記事を読んだ後は記憶量が減る、など)
・勤勉性
幼少期のしつけが大事。
基本的なモラルを身につけさせる必要がある。
夏休みの宿題を後回しにする人は貯蓄もダイエットもうまくいかない。
以上、『「学力」の経済学』を読んで学んだことでした!
おすすめです!!
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